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企画書を生成AIで作ろうとして、出てきた文章を読みながら「それっぽいけど、これ通らないな」と思った経験はないでしょうか。
非エンジニアの企画・マーケ・事務職にとって、企画書や提案資料は日常業務のど真ん中です。AIが使える人は評価され、使えない人は取り残される、という空気も出てきました。
ただ、丸投げでは通る企画書は出ません。私自身、マーケティング戦略資料を生成AIで作ってみました。時短はできたものの、一発では出ないし、本質は自分で考える必要がある、という実感が残っています。
この記事は、企画職として現場で資料を書いてきた運営者が、生成AIで企画書・提案資料を仕上げるまでの型をまとめたものです。
- 丸投げしても通らない3つの理由
- 先に自分で決めるべき骨格
- AIに書かせる5ステップ(ツール横断で再現可能)
- 非エンジニアがつまずく5つのポイント
ツール指名の小技ではなく、数年単位で使える考え方を中心に置いています。
生成AIで企画書は時短できる、ただし丸投げは通らない
先に結論から書きます。
生成AIで企画書や提案資料を作ると、ゼロから書いていた頃より確かに時間は減ります。一方で、「プロンプト1本で通る企画書が完成」という期待値では、ほぼ確実に裏切られます。
経済産業省と総務省は、2025年3月に「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」を公表しました。ここではAI活用が「やらないことがリスク」と位置づけられています。一方で、ハルシネーション(事実でない情報の生成)への対処は、利用者側の責任とされています。つまり、出力を検証する前提で使うのが実務の基本です。
企画書づくりでAIが効くのは、構成の壁打ち、初稿のたたき、ページごとの表現バリエーションの3つ。一方で、相手の内情を踏まえた「芯のあるメッセージ」や、数字の根拠、画像の細かな調整は、人間の仕事として残ります。
この記事では、AIに任せる部分と自分で決める部分を切り分け、「型」を先に用意してからAIに書かせる流れを提案します。
AIに任せきれない3つの落とし穴
生成AIで企画書を作るときに、実務でぶつかる3つの落とし穴を先に共有します。
事実でない情報を盛り込んでくる
いちばん怖いのがこれです。会社特有の情報、業界の細かい数字、競合の具体動向を入力していないと、AIはそれっぽい固有名詞と数値を自動で埋めてきます。総務省の情報通信白書でも、ハルシネーションは生成AIの代表的課題として挙げられています。
対処は2つ。1つは、AIに渡す情報源を明示すること。もう1つは、AIが書いた数字や固有名詞は必ず自分で裏取りする癖をつけることです。「資料にないことは答えない」「不明なときは『不明』と書く」と指示に入れるだけでも、無理な補完はかなり減ります。
一見通るが、芯を食っていないメッセージが混ざる
AIの出力は文章として整っています。ただ、本質を突いているかは別問題です。
私の実感だと、AIが書いた企画書はたいてい「誰でも言えること」で埋まります。相手企業の事業構造や、担当者がいま動かしたい論点、そこに紐づいた「この資料で一番伝えたい一文」は、人間が決めないと出てきません。
骨格(何を言うか)は自分、装飾(どう言うか)はAI、という分業の発想が現実的です。
画像にテキストが焼き込まれる問題
スライド自動生成系のAIを使うと、タイトル画像やアイコンのなかにテキストが埋め込まれた状態で出てきます。あとから1文字だけ修正したいとき、これが非常に面倒です。
テキストボックスで上書きする応急処置もありますが、フォントが揃わず、印刷やPDF化で違和感が出ます。対策は2つです。画像内テキストを最小限にすること。そして、スライドフォーマットを自分の基本デザインで先に組んでおき、AIが生成した画像は装飾のみに使うこと。
もうひとつよくあるのが、イラストのテイストが資料全体と合わない問題です。淡い水彩テイストの資料に、いきなり立体的な3D調のアイコンが混ざる、といった事故が起きます。テイスト統一のルールを先に決めてからAIに画像を出させるのが安全です。
私の場合: マーケ戦略資料を10時間から5時間にした流れ
2026年2月、マーケティング戦略資料を、生成AIを使って作りました。資料参照型のAI(ソースとして文書を読ませる形式のもの)を中心に使い、対話型のAIで壁打ちをする組み合わせです。
AIを使う前は、同じ規模の戦略資料で10時間ほどかかっていました。使った後は5時間弱まで縮んだ感覚です。ざっくり半減なので、時短効果は確かにあります。
ただ、「半分の時間で完成した」という単純な話ではありませんでした。
- 一発で理想的な資料は出なかった
- 繰り返し修正指示を出しながら詰めた結果、5時間かかった
- 先に大きな構成を自分で考えて持ち込んだので、構成レベルの手戻りはなかった
- 逆にAIの言葉を鵜呑みにした箇所は、あとから「芯を食っていない」と気づいて差し戻した
学びは一言でまとめると、一気に作ろうとしない、です。最初から仕上げを狙わないのがコツです。構成をAIと相談して固める。ページ単位で書かせる。複数案から選ぶ。この3段に分けると、結果的にいちばん早く仕上がります。
AIの出力には幅があります。1案で満足せず、3案出させて「どれが一番伝わるか」を自分が選ぶだけで、資料の説得力は一段上がります。
通る資料の骨格を、先に自分で決める
ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。
AIに企画書を丸投げしても芯を食わないのは、そもそも企画書の骨格が人間の頭の中で固まっていないからです。骨格があってはじめて、AIは装飾と言い換えを手伝えます。
背景/課題/打ち手/効果/リスクの5要素
企画書の骨格は、多くの場合この5つに集約できます。
- 背景: なぜいま、この議題が必要か
- 課題: どこに詰まりがあり、放置するとどうなるか
- 打ち手: 何をやるか、いくつかの選択肢と推奨案
- 効果: 実行すると、どの指標がどれくらい動くか
- リスク: 打ち手のデメリットと対処方針
この5つをA4の紙1枚に自分の言葉でメモしてから、AIに渡します。「背景と課題のつなぎ目が弱いから厚くして」「効果のところに数値の振れ幅を入れて」といった具体指示が出せるようになります。
ページ構成を最初に壁打ちで決める
次に、A4の骨格を「何ページの資料にして、各ページで何を伝えるか」に落とし込みます。ここはAIと壁打ちすると早いです。
「この5要素をクライアント向けの20ページ資料にするなら、どうページを割るか。表紙、サマリー、背景、現状分析、打ち手、スケジュール、効果、リスク、まとめ、の案を2通り出して」といった指示で、構成案が数分で並びます。
自分で決めきれないときに、複数の選択肢から選ぶ形に持ち込むのが、AIの使いどころです。
AIに書かせる5ステップ(ツール横断)
骨格とページ構成が決まったら、AIに書かせる工程に入ります。ツール指定は避け、主要な対話型AIや資料参照型AIで再現できる手順にしてあります。
Step1 前提情報を渡す
会社名・事業・業界・ターゲット・専門用語を10〜15個、最初にまとめて渡します。情報がないとAIは抽象論に走るため、ここが一番大事です。
公開情報のみ使う、機密は仮名化する、というルールは事前に決めておきます。
Step2 構成を壁打ちで固める
先ほど決めた骨格をAIに見せ、「この構成でページ割りを2通り提示して」と指示します。出てきた2案のどちらが相手に伝わるかを、自分で選びます。
Step3 セクションごとにドラフトを作る
1ページ分ずつ、または1セクション分ずつAIに書かせます。全体を一気に書かせると抽象度が揃わないため、粒度を細かく切ります。
指示は「聞き手は誰」「伝えたい一文は何」「避けたい表現は何」を明示します。
Step4 複数案を出して選ぶ
同じセクションで3案出させて、自分が選ぶ流れが有効です。AIの出力には幅があり、1案で判断すると偏ります。選びながら「自分が書きたかった言葉」が明確になる副次効果もあります。
Step5 自分で芯を通す
最後に、全体を通して読み、相手にいちばん伝えたい一文を自分で書き直します。ここは人間の仕事として残します。AIが書いた文のなかに「誰でも言える表現」が混ざっていたら、具体の言葉に置き換えます。
非エンジニアがつまずきやすい5つのポイント
現場で詰まりやすいポイントを先に書いておきます。
- 前提情報の渡し忘れ。会社特有の情報を渡さずに書かせると、AIはそれっぽい数字を捏造します
- 長すぎるプロンプト。全部の指示を1つに詰め込むと、AIは重要な指示を見落とします。A4半ページを上限にします
- 1案で判断する。AIの出力は幅があるので、必ず複数案を出させます
- 画像内テキストの扱い。あとから修正できない前提で、画像は装飾、テキストはテキストボックス、と分けておきます
- 「通る」の基準を自分で持たない。AIの出力が「通るか通らないか」は最終的に人間が決める、という立場を崩さないことです
この5つを意識するだけで、資料づくりの時間は体感で3〜5割は短縮できます。
どこを人間が、どこをAIに任せるか
役割分担を表に整理しました。攻めの資料、守りの資料どちらでも使える切り分けです。
| 工程 | 人間 | AI |
|---|---|---|
| 目的の定義 | 主 | 補助(壁打ち) |
| 骨格の5要素 | 主 | 補助(並び順の提案) |
| ページ構成 | 判断 | 案出し |
| 各ページのドラフト | 判断・修正 | 主(複数案) |
| 数値・固有名詞の確認 | 主(裏取り必須) | 補助(提示) |
| 画像・イラスト生成 | 指示 | 主 |
| 芯の一文 | 主 | 使わない |
| 最終読み直し | 主 | 補助(違和感チェック) |
「主」と書いた工程を人間が放棄すると、AIで作った資料は一見整っているのに通らない、という結果になりやすいです。
まとめ: AIは書き手ではなく、構造化の壁打ち相手
生成AIで企画書・提案資料を作る最大のコツは、AIを書き手ではなく壁打ち相手として扱うことです。
- 骨格は人間、装飾はAI、と分業する
- 一気に仕上げず、構成→ドラフト→選別の3段階に分ける
- 複数案を出させて、人間が選ぶ
- 数字と固有名詞は必ず自分で裏取りする
- 芯の一文は、最後まで人間の仕事として残す
経産省と総務省の「AI事業者ガイドライン」でも、AI活用は進めつつハルシネーション等のリスクは人間側で管理する、という立場が示されています。企業の資料づくりでも同じ原則が当てはまります。
AIを使って時間が浮いた分で、本質的な問いや数字の検証に時間を使えるようになれば、企画書の質はむしろ上がります。小手先のプロンプト技よりも、型を先に用意する習慣のほうが長く効きます。
参考資料
- 経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」2025年3月28日
- 総務省「令和6年版 情報通信白書」生成AIが抱える課題
- 厚生労働省「教育訓練給付制度」対象講座検索システム
よくある質問
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